当グループでは、近年アスカラヤン法に加えて、レーダー法による高エネルギーニュートリノ検出器の提案を行っています。この方法は、ニュートリノによって媒質に生じた電磁シャワーの部分の微小な温度上昇による電磁波の微小反射を捉えるものです。現在、巨大媒質として候補となる岩塩ドームや南極氷床を想定し、予備実験として、これらの材料の温度変化による電波反射係数の変化を測定しています。実験は、高崎量子応用研究所の電子ビーム照射施設等で実施しています。
この実験では、図１のような受信回路を使用しています。微小な反射係数の変化を測定するため、ブリッジ回路を零検出器として用いています。
測定手順は以下の通りです。
電子ビーム照射前の受信信号が零となるように、可変減衰器３台、可変位相器（移相器）３台を、６台のDC電源により手動で操作して調整します。
調整後電子ビームを一分間照射して材料の局所温度を上昇させ、検波器、スペアナ等により受信反射信号の変化（差信号の大きさ）をデーターロガーやPCに記録します。
また、熱電対を材料に設置し、同時にその温度変化もデータロガーに記録します。これから温度変化に対する受信信号電力の変化を測定します。
図１に従来の受信器のブロックダイアグラムを、図２にその写真を示します。写真のように、たくさんの電源と取り込み用のノートパソコンが必要でした。
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図１．受信回路のブロックダイアグラム |
上記のような手動による零調整やデーターロギングを全て自動化し、一つのパソコンで実行する目的で、NI LabVIEW [1] を導入しました。
図３は、改良したブロックダイアグラムの概略を示します。図4の写真に示すように、電源やNote PC の数も激減し、また、実験時間の大幅な短縮も実現できました。
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図3．改良した受信回路のブロックダイアグラム（概略図） [2][3] |
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図4．受信システムの写真（LabVIEW導入後） [2][3] |
図5に実際のLabVIEW Program 画面を、図6に操作パネル画面を示します。
また、この測定システムは通常の受信電力の変化を測定する回路 [2] でしたが、常に参照信号の位相をコントロールして零調整し、その移相量を記録することもできるようになりました。この受信システムを用いると、反射波の位相変化を測定することが可能となり、反射波の原因が材料の誘電率の温度変化によるものであることが実験的に確認できました。[3]
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図5．LabVIEWのプログラム画面例 |
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図6．LabVIEWのプログラムの操作パネル画面 |
図７に使用したデータ収録およびコントロール機器の写真を示します。
参考文献：
[1] National Instruments 社カタログ
[2] 谷川孝浩，上條敏生，千葉雅美，安田修，矢野浩之，矢吹文昭，秋山英俊，伊藤昇吾，近匡，清水裕，近重悠一，内海倫明，藤井政俊：「超高エネルギーニュートリノ検出器のための電子ビーム照射による岩塩と氷からの電波反射強度測定」, 日本物理学会 第67回年次大会, 関西学院大学 西宮上ケ原キャンパス, 24pFB-10（2012-3）
[3] 矢野浩之，上條敏生，谷川孝浩，千葉雅美，安田修，矢吹文昭，秋山英俊A，伊藤昇吾A，近匡，清水裕，近重悠一，内海倫明，藤井政俊：「超高エネルギーニュートリノ検出器のための電波反射測定における位相測定」, 日本物理学会 第67回年次大会, 関西学院大学 西宮上ケ原キャンパス, 24pFB-11（2012-3）
謝辞
当研究グループでは、検出器制御回路の作成の重要な制御ボード（NI ELVIS �供砲旅愼�・製作にあたり National Instrumentsu 社のご協力をいただきました。ここに感謝の意を表します。
